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【報告】「女性と防災」テーマ館主催シンポジウム①

Women Can Do It! 女性と防災まちづくり

「女性と防災」テーマ館では、「仙台発 東日本大震災4年後の視座」と題し、被災地の女性たちの経験や知見を発信する5つのシンポジウムを開催しました。

東日本大震災を経験した私たちだからこそ伝えられること、伝えていかなければならないこと―。震災からこれまでを総括し、より実効性のある取り組みに向けた視点を、「多様性」と「女性のリーダーシップ」をキーワードに提示。

参加者の皆さんの感想とともに、この5つのシンポジウムを振り返ります。

※人物の役職・肩書及び組織等の名称は、当時のもの

­­­­­­­­­­­­­­­­「トーク×トーク 女性のたちのリーダーシップ」

初日の3月14日に行われた「トーク×トーク 女性たちのリーダーシップ」では、仙台・宮城で地域のために何かしようと立ち上がった女性たちが思いを語り合い、そこから浮かび上がった新しいリーダーシップのかたち、女性たちの持つ力や可能性について議論を深めました。

オープニングは、「朗読リラの会」による朗読。「あの日があったからこそ生まれた思い」に焦点を当て、女性リーダーの新しいありようを伝えてきた冊子『パンジー』の一節が読み上げられると、会場が一気に『パンジー』の世界に引き込まれていきました。

4部構成で行われたこのトークセッション、全体のコーディネートを『パンジー』のディレクター、株式会社ユーメディアの岩本理恵さんが務めました。

第1部【あの日うまれたもの ~わたしの転機~】

スピーカーは、宮城県亘理町で女性たちの手しごとプロジェクトを立ち上げた一般社団法人ワタリス代表理事の引地恵さん、被災女性の語り合いの場などの活動を行うおとな女子3040プロジェクト代表の門間尚子さん。

お二人から活動の原動力として共通して語られたのは、自分自身の過去の辛い体験や自分を変えたいけれど踏み出せずにモヤモヤしていた頃の気持ち。しかし、それがあったからこそ、震災後に傷ついている人や手を差しのべなければいけない人たち、どんな支援が必要なのかを敏感に察知し、行動につなげることができたといいます。

引地さんは、ワタリスの取り組みで地域の女性たちが収入を得られたり、商品が国内外の様々な人たちの手に渡っていくという成功体験の積み重ねが女性たちの自信につながっていることを紹介しながら、「自分が心から納得してやったことは続けられるし、賛同者も出てくる。地域の課題のちょっとしたことでも、それぞれが楽しんでやれることで行動していけば、地域全体が良くなっていくはず」と語りました。

門間さんは、「命や心、体が脅かされないという安心感や安全感を大切に活動してきた。いろいろな役割を抱える女性が“私”に戻って話ができる場、くつろげる場づくりをこれからも丁寧に続けていきたい」と活動の背景にある思いを伝えてくれました。

第2部【地域で生きる】

スピーカーは、仙台市宮城野区岡田地区で自家作物や農産加工品などを販売する岡田手づくりアグリの会代表の菅野陽子さん、宮城野区新浜町内会の女子会で代表を務める村主夏江さん。

村主さんが住む町内は津波でほぼ全壊の被害を受けた地域。自宅再建を決めていち早く地域に戻ったものの、すっかり変わってしまった景色や戻れない方、亡くなった方のことを思い、元気が出ない日々を過ごしていたといいます。町内の同じような状況にある女性たちを元気にしてほしいと町内会長から打診された村主さんは、女性たちが笑い合ってお茶のみができる場をつくろうと「女子会」を立ち上げました。村主さんは、「まわりの人が元気じゃないと自分自身も元気になれない。せっかく戻ってきたのだから、私が楽しく暮らしていきたいという思いが活動の出発点」と語りました。

菅野さんは自宅の被災は免れたものの、津波の避難者たちであふれかえった避難所で、食の支援に奔走しました。周囲の女性たちを巻き込み、すぐに行動できたのは、震災前から培ってきた地域とのつながりと食のプロとしての自覚があったからこそ。菅野さんは、「男性主導の町内会では食の支援がうまくいかないこともあった。食の大切さを知っている女性リーダーの必要性を痛感した」と振り返りました。

第3部【あの日うまれたもの ~わたしを動かしたもの~】

スピーカーは、仙台市宮城野区南蒲生町内会復興部で地域を盛り上げる活動を行う二瓶明美さん、南相馬市での被災を機に福島の子どもたちに向けた「楽(らく)つみ木ワーク」をはじめた恵むの杜の阿部恵さん。

震災前は社会と関わる活動をあまりしてこなかったというお二人の生活は、震災で一変します。父親が町内会長だったということもあり、避難所・仮設住宅で徐々に活動に巻き込まれていった二瓶さん。女性がたった一人の町内会の復興部で、まちづくりの活動を続けてこられたのは、避難生活を通じて地域の人や支援してくれた人とのつながりの大切さを実感したからだといいます。「この3月に完成したばかりの南蒲生の集会所は、住民主役のまちづくりの一つの到達点。ここを拠点に人と人をつなぐ活動を続けていきたい」と語りました。

外遊びを制限されている福島の子どもたちに木のぬくもりを感じてもらいたいと活動をはじめた阿部さんは、震災前は人の前に立って話したり教えたりする自分を想像できなかったそうです。福島の困難な状況に直面し、180度考え方が変わったという阿部さんは、「これまでは自分にしか向いていなかった意識が外に向くにようになった。これからも福島の人たちに寄り添った活動していきたい」と伝えました。

第4部【あたらしいリーダーシップのかたち】

第1部で聞き手を務めた仙台市地域防災リーダーで岩切学校支援地域本部地域コーディネーターの菅野澄枝さん、第2部と第3部で聞き手を務めたまちづくり政策フォーラム理事の足立千佳子さん、せんだい男女共同参画財団木須八重子理事長、そして全体コーディネーターの岩本理恵さんの4人が登壇し、これまでのお話から浮かび上がってきたキーワードから、震災後の仙台・宮城で生まれている「あたらしいリーダーシップのかたち」にせまりました。

6人のスピーカーの姿から、「自分を大切にし、自分の見える範囲のまわりの人を大切にすること、元気にすることからはじめている」、「地に足のついた行動が周囲に影響を与えている」、「役割を見つけるのが上手」、「男性だけではやりきれなかった分野にうまく入り込んでいる」、「暮らしの質をよくする知恵を女性たちはもともと持っている」といった共通点が語られました。

これまでの、先頭に立って引っ張るタイプのリーダーではない、仲間とつながり、横に並んで一緒に地域を盛り上げていく新しい女性のリーダーシップ像に触れながら、「自分がついていきたいと思うリーダーを見抜く力も必要」、「リーダーのモデルは一律でなくていい」、「ちょっとした場面で遠慮せずに意見を言えるようになることもひとつのリーダーシップ」という意見なども交わされました。

木須理事長は、「『非常時には平常時に見えなかった課題が現れる』とマイナスの意味で言われることが多いが、平常時に隠れていた女性たちの力がこの震災を機に発揮されるようになったことを実感できた。次の災害への備えとして『女性たちは力を持っている』ことを発信していきたい」とまとめました。

この日の参加者は、187名。登壇した女性たちそれぞれの思いに触れ、リーダーシップの種は誰の中にもあることを感じてもらえたと思います。

参加者の感想

  • 震災によって外の世界を知ることで、女性たちは変わった。女性たちはもともと力を持っているのだと気づくことができました。
  • 何もしないでいるのではなく、小さなことで良い、一歩踏み出してみようと思いました。
  • まわりの手をつなぐことも、世代をつなぐことも女性の力が大きい。自分でできることを探して行動している、そこから生まれる言葉はヒントになりました。
  • そばにいる、一緒にいる、この人のそばにいると少し笑える気がする、そんなところから肩肘はらずにチャレンジできる新しいリーダーのあり方が見えたような気がしました。
  • 地域の中で、声を発することの大切さを知りました。自然体でしなやかに活動している姿をみて、私も声を出していきたいと思いました。
  • リーダーシップの考え方が少し変わりました。とても身近に感じるようになり、自分も頑張りたいという勇気をもらいました。

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