“きもち”をつなぐバス ~福島行 報告①
2015年10月21日

9月26日~27日の1泊2日で、福島の被災地をめぐるスタディツアーを開催しました。仙台・宮城で復興やまちづくりに取り組む女性たちと、せんだい男女共同参画財団職員の計15名が参加。震災から4年半を経た福島の現状、現地で出会った女性たちの思いを、3回連載でお届けします。

◆“縁”がつながって実現した福島行

26日の出発時は、あいにくの雨模様。
「震災の翌年に仙台で開催した日本女性会議のときから、“ふくしまのことを忘れない”という思いをずっと心に刻んできた。さまざまな方の協力を得て、このスタディツアーを実現できたことをありがたく思う」と財団の木須理事長が、挨拶しました。

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今回のツアーは、福島の「女子の暮らしの研究所」(以下、女子クラ)が現地コーディネートやガイドを担当。初日は、虷澤(かんざわ)さん、林崎さん、大和田さんの3人が同行してくれました。
2015年3月の国連防災世界会議「災害と女の子たち ~ガールズ防災会議」で、林崎さんにご登壇いただいたことから始まった女子クラさんとのつながり。皆さんの体験談や思いも、後ほど紹介していきます。

2日間ガイドをしてくださった、虷澤さん
2日間ガイドをしてくださった、虷澤さん

車中では、参加者もそれぞれ自己紹介。
震災後に取り組んできた活動のこと、今の自分が感じている問題意識、ツアーに寄せる期待を熱くお話しいただきました。

 

◆相馬市「報徳庵」から原釜地区、松川浦へ
【語り部:大亀(おおみか)郁美さん/復興支援センターMIRAIスタッフ】

最初の訪問地は、相馬市の仮設商店街にある「報徳庵」。
復興レストラン兼コミュニティスペースとなっている店内には、水産加工品や福島の手仕事品も並んでいます。

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ここから沿岸部まで、復興支援センターMIRAIスタッフの大亀さんに案内していただきました。

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相馬市は「活魚発祥の地」と言われ、震災前は漁業を初めとする一次産業が盛んでした。漁師は子どもたちの憧れの職業でもあったといいます。

しかし、原発事故の影響により、福島県沿岸部の漁業は2015年9月現在も、一部の魚種を対象とした「試験操業」を除いて操業自粛を余儀なくされています。

福島県漁連では、試験操業によって水揚げしたものについても、国の出荷基準値である1kgあたり100ベクレル以下よりもさらに厳しい、50ベクレル以下を自主基準値として出荷しているそうです。

震災後に再建された原釜漁港の漁具倉庫
震災後に再建された原釜漁港の漁具倉庫

大亀さんは、高校2年生の時、相馬市で被災。福島第一原発から40~45km圏内にある相馬市は、放射能汚染よりも津波被害が大きく報道されていました。

しかし放射線の影響が心配になった大亀さんは、「避難したい」と家族に伝えるものの、親の仕事の関係や避難を望まない家族の意見により、叶わなかったそうです。「家族で一番若い自分の意思は反映されないんだ…」と、歯がゆい思いをしたことを打ち明けてくれました。

また、高校卒業後、進学先の福岡で、3月11日に、「動物園に行かない?」と友人から誘われ、福島や東北の人たちとの温度差を感じたという大亀さん。

「知らないと自分ごとにならないのは当たり前。実際に足を運んで現地を見てもらいたい、忘れないでほしいと思って、被災地の語り部をしています」と話してくれました。

そんな大亀さんも、元々相馬に戻ろうという強い意思があったわけではないといいます。所属する復興支援センターMIRAIのスタッフは、5名中4名が、震災後に相馬市外から支援に入った方々。代表の押田さんの「相馬を誇れる場所にしたい」という言葉に感銘を受け、「地元の人間である自分が動かなくてどうする!」と、相馬で活動を始めた経緯を伝えてくれました。

大亀さんの案内で、原釜地区に建てられた慰霊碑に献花。

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津波で歪んでしまった公園の遊具

市内で犠牲になった458名の方の追悼と震災を語り継ぐ「相馬市伝承鎮魂祈念館」や、松川浦の様子を見学しました。

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◆相馬市から南相馬市へ
【語り部:林崎知実さん/女子の暮らしの研究所】

南相馬市に向かう車中、同市出身で、震災当時は福島大生だった林崎さんが、自身の体験をお話ししてくれました。

実家は福島第一原発から18kmの距離にあるが、震災前は特にそのことを意識せずに生活していたこと、たまたま訪れていた富岡町の友人宅で被災し、健康被害の不安を抱えながら過ごしてきたこと―。友人や家族の間でも放射線への考え方の違いによる軋轢が生まれ、本音で話せないもやもやを感じていたそうです。

そんな中、任意団体peach heartが企画した「女の子のための保養ツアー」に参加したことがきっかけで、代表の日塔さんと出会い、女子クラの研究員として活動し始めました。現在は社員となり、目玉事業のひとつであるラジオ番組「ラボラボラジオ」で、リスナーと一緒に社会問題を考えたいと、さまざまなテーマに向き合っています。

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「意見をはっきりと表明する今の自分は、家族の中でめんどくさい存在と思われていると思う」と笑う林崎さん。

大亀さんもそうでしたが、自分の思いや考えをしっかりと持っている20代の女性たちの姿に、心を打たれました。

 

◆南相馬市小高区「おだかのひるごはん」
【語り部:渡邊靜子さん/「おだかのひるごはん」店長】

福島第一原発から20km圏内にある小高区は、避難指示解除準備区域となっており、立ち入りは自由にできますが、宿泊をすることはできません。

おだかのひるごはん」は、自宅の清掃・修繕に来た住民の方や除染の作業などに従事する方に、温かい食事を食べてもらいたいと、2014年12月に開店。私たちが訪れた土曜日は、普段は休業日なのですが、貸切営業してくれました!

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この日のメニューは鶏の唐揚げ定食。おいしい料理に、箸が進みます。

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食後のコーヒーをいただきながら、店長の渡邊さんのお話を聞きました。

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食事のできるお店が一つもなかった小高区で、仲間と一緒に家庭料理でもてなす食堂をやろうと決めた時、「こんなところに誰が食べに来るんだ」という反対の声もあったそうです。

また、人と接するのは好きだったという渡邊さんも、厨房に立ち、「仕事」として食事を提供することに、最初は不安もあったといいます。

しかし、訪れた方たちから「お茶碗でごはんが食べられるのが嬉しい」「ここに来たら誰かに会えるね」と声をかけられるうち、自信がついてきたとのこと。

今は原町区の仮設住宅で暮らす渡邊さん。
「私は小高が好きだから、戻ってここで暮らしたい。少しでも皆さんの役に立ちたい」と、思いを語ってくれました。

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突き当たりの、シートで覆われているのが小高駅。2016年4月の帰還を目標に、インフラ整備が進められている。

 

・・・②につづく・・・

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